お母さん、待って。
どこにもいかないで。




自分自身が発した声で、目が覚める。パジャマは汗でぐっしょりと濡れていた。
「…っはあっ、はあっ、はあ…っ」
乱れた息を整えたくて、私は深呼吸した。
涙が頬を伝うのがわかる。
お母さんが亡くなって10年。私は悪夢を見続けていた。
「メシ」
ノックもせずに、ぶっきらぼうに、義母である薫さんの声が響く。
「…はいはい」
薫さんは、この家の独裁者だ。