なんだか、自分が恥ずかしくなった小春。これでは自分からあだ名を付けろ、そしてそう呼べと言っているようだ。
「俺たちだってこうやってあだ名で呼びあったりするのに、五、六年かかったからそう簡単に人にあだ名つけようなんて思わないんだよね」
頭をぐしゃぐしゃと掻きながら、歩く足を止めて小春を見る。
春風に吹かれて樋村の髪は靡き、普段見れない顔が見れた。柔らかく笑った樋村の顔を…。
「会長だって俺たちを苗字で呼ぶし、お互い様ってやつだよ」
「…それも、そうかもしれないわね」
風に靡く髪を掻き分けながら、小春は樋村に満面の笑みを向けた。樋村はそれを確認すると、また前を向き歩き出した。
放送部までにいく間に、小春は誰にどんなあだ名を付けようか考えていた。

