「………お願い?」



日も高く上がりかけた
昼下がり


天気はよく、雲ひとつない青空


私はいつものように
皆を納めている祠の前

大きな銀杏の木で休んでいた


木の、上に登って



この木は強い
古くからある、とても偉大で
大きな木
そして、優しい木


いつもこの子の体を借りて
鳥のさえずりや
風を感じる


『ああ。…ちょっと、あってほしい人がおっての…』

小さな声で
妙に俯きながら
独り言のように呟く

…楓にしては珍しい


「へえ…それで、会ってどうしてほしいんです?」


『どうとかはないのだ』

「へ?」



思わず変な声が出る

地主神である楓は、
私と式神以外に姿は見えない

ましてや、その土地の神

それが"人"に興味をもつ時点で
とっても、珍しい



「…では、何故、逢ってほしいのですか?」


『ちょっと、気になっての…』


相変わらずモジモジしている
珍しすぎて、どう対応したらいいか分からない…


「…楓が、人間に興味をもつなんて珍しいですね」

『興味などない』


ぷいっと、そっぽを向く


素直じゃない、小さな妖精だ


『おそらく、鈴姫も会ってみたら分かるだろう。あの者は、普通の人間と少し違う』


「そうですか…それで、私に会って、調べてほしいと」

『その通りだ』