「あ、あの…」
「なんだい?」
彼と、目が合う
少しでも、彼に近付きたい
彼のこと、知りたい
彼に、知ってほしい
そして、特別な存在になりたい………
「あの、私のこと、"杏ちゃん"じゃなくて、"杏"って、呼び捨てで呼んでください!響古のことも、呼び捨てですし!!」
そう。ほんとに初歩的なことから
ゆっくり、ゆっくり、歩み寄っていきたいよ…
「………どうして?」
「…え?」
紫さんを、ゆっくり
見上げる
いつもみたいに優しく
にこりと、微笑んで…
ない。
「どうして俺が、君の事を呼び捨てにしなきゃいけないのかな?」
視線が、目が、冷たい
優しげな彼の面影は
感じられない
初めて見る、冷たい顔
「なんで、って…その…仲良くなりたいから…!」
声が震えていた
どうして?
私が聞きたい
「その必要はないよ。俺と君は、無関係な存在なんだから」
無表情な表情のまま、
淡々と話す
「俺は、君を信用していない。響古は純粋すぎるんだ…鈴姫と同じで」
私に背を向け、歩き始める
「もう、二度と、俺は主以外の人間を信じない。それは君も、同じだ」
私、震えてる
どうして?
教えてよ
響古………

