…黒くて、
男の人にしては長い髪
後ろでひとつに結んで
それが肩の方に流れる
風に揺れて、ふわりと舞う
濃い、紫を基調とした着物に
色白で、スラッとした細い体が
さらに色を際立たせている
切れ長で
深い、闇を湛えたような瞳
「…し、しばさん…」
この人に出会って一瞬で
変わってしまった
「杏ちゃん、だっかな?」
心臓が、跳ねる
変わってしまった
私の心
私は、響古の友達で良かったと、
この時以上に思ったことは
あっただろうか
響古と一緒にいるだけで、
私も、特別な存在なんだと
「ここ、どこだかわからなくてね。響古と離れてしまったから、迷ってしまったよ」
クスリと笑う彼
トクンと鳴る心臓
私は、はじめてだった
こんな気持ちは
「なら、案内します!!」
平常心、装えているだろうか
「ありがとう」
にこりと、私に微笑む
「や、やっぱり、この時代の建物は分かりにくいですか?」
紫さんの隣を
ゆっくり、ゆっくり
歩く
「そうだね…不思議なものばかりで、本当に面白いよ」
「そ、そうなんですか…」
「…」
「…」
「…」
やばい。
緊張のあまり、会話がもたない…

