「杏、みんなの事が見えないの…?!」
少しの沈黙のあと、
はぁ と
ため息が聞こえた
「あのね。私はあなたと違って、特別な力なんて持ってないの。見えるわけないでしょうが」
「でも、さっき、あなたたち、誰?って聞いたじゃん!」
「カマかけたのよ」
ふふんと鼻をならすように笑う
『そやつは、途中で目が覚めたのだが、キョウコが何やら騒いでいるから、しばらく様子を見たのだろう。そして他に人がいて、何人かと会話している…問いただしても教えてくれそうにないから、わざと見えるフリをした』
「な、なるほど…頭いい…」
素直に感心してしまう
杏に、そんな芸ができるとは
「…もしかしてもう一人いるの?何だって?」
「えっと、楓ちゃんが…杏が私に本当の事を話させるために、わざと見えるフリをしたって」
「そうよ。ご名答。」
にこっと、私のとなりにいる楓ちゃんに微笑んでいる
…姿は見えないのに
「で、コイツはどうするんだ?普通の人間に正体が見破られてるんだぞ」
ずいーっと
眉間にシワを寄せて私に近寄る
「わかってるけど…杏は、いい子だよ。私の、親友」
「んなこと聞いてるんじゃねぇ!!!!!!」
と、紅が叫ぶのと
「あら。いきなり誉められちゃった」
と嬉しそうに笑う杏が同時だった

