まだ、悩んでいる顔の中村先生が二戸 梨杏の顔をじっと見つめる。
「なぁー、二戸?今夜の晩ご飯、何が食べたい?」
中村先生と私以外、誰もいない教室――。
こんな会話をしていてもいいの、私達?
ドキドキする胸に手を当てながら、考える。
――今夜の晩ご飯。
中村先生の耳に両手をそっと当てて、声を潜めて話す二戸 梨杏。
「ええっとねー、赤いケチャップがたっぷりとかかった、オムライス!」
中村先生が頷く。
「よしっ、わかった!」
中村先生が返事をし終えると、次々とクラスの生徒達が挨拶をしながら教室の中へ入って来る。
「おはようございます!」
中村先生の顔つきが変わり、すくっと立ち上がった。
「はい、おはようー!」
――いつもの、先生の顔だ。
かっこいいな。
私は、いつまで先生の妹でいられるんだろう――。
生徒、時々、妹。
ずっと、中村先生の妹でいたい――。
(完)