――だけど、
先生、私の事を馬鹿にしなかったし、笑わなかったのは――。
自分も笑えないエピソードが、あったからなんだね。
「私が、“おまじない”してあげようか?」
「おまじない―!?」
二戸 梨杏が空気を軽く吸い込んで、フッーと優しく中村先生の中指に息を吹きかける。
「おばあちゃんに教えてもらったの、もう今はいないけどね。傷が綺麗に治る“おまじない”!」
「サンキュウ!傷痕、綺麗に消えるといいな」
「うんっ!」
――雷がゴロゴロとまだ鳴っている。
――午後5時40分――
ちょっと早い目の夕食を取る。
今日は、親子丼と味噌汁。
キッチンに並んで夕食の支度を手伝った私。
足手まといになったみたいで、先生ゴメン――。



