「ほらっ、見ろよ、俺の中指。指の外側にまだ縫った痕が残ってる。お前と一緒だ……」
――傷痕。
5cm近くある縫った痕。
でも、中村先生の傷痕は隠し用がない。
いつも、学校で普通に白いチョークを持っている先生の右手、言われるまで全く気づかなかった。
「縫った痕……、どうして?」
気になったから、つい聞いてしまった。
右手を少し伸ばし、中指の傷痕をぼんやり眺める中村先生。
「中学校3年生の時に、車にひかれる事故にあったんだ。中指の怪我だけで済んで本当に良かったと思う。何度か手術をした、この中指――。“命“があって、ホント良かったよな、俺とお前」
「本当だね――」
私は、中村先生に犬に追いかけられて噛まれた話をしたら、間違いなく馬鹿にされて笑われると思っていた。



