中村先生が二戸 梨杏の顔をチラッと見る。
「まっ、可哀想だけど、犬に噛まれた跡は治りにくいんだ。でも、靴下で隠れる場所で良かったよな?」
中村先生の話を聞きながらおろしていた靴下を上げている二戸 梨杏。
「靴下で隠れても、消えない傷跡は何年経っても嫌な物はイヤですよ――」
――隠れたら、良いってもんじゃないよ。
私、この“傷跡”が好きになれないんだから――。
いっそのこと、綺麗に消えて、元通りになって欲しいと思っているぐらいなのに。
――先生、女の子の気持ちが、少し分かってない。
あー、先生に傷跡を見せた事をちょっと後悔。
すると、突然、中村先生が自分の右手の中指を二戸 梨杏に見せてきた。



