クッ・ク・ク………。






「クモだっーーー・……」






叫びかけた口を自分の両手で押さえる二戸 梨杏。






――このマンションでは、大きな叫び声を上げてはいけないんだ。







叫んだらダメッ、絶対に叫んだらダメ……。






まだジョウログモが顔を出して二戸 梨杏の顔をじっと見ている。







二戸 梨杏がポンポンと中村先生の髪の毛を軽く叩いてジョウログモを追い払おうとする。







「ほらっ、早く先生から離れて……ほらっ――」






追い払おうとすれば髪の毛の中へ潜り込み、また顔を出すの繰り返しのジョウログモ。






まるで、中村先生の頭の上で“もぐらたたき”をしている様子だ。