息の荒い先生、肩で息をしている。
ハッーーハッー、ハッ……ハッ!
他に持っていかないといけない物は?
えっーと、えっーと……。
メイク落としと化粧品だっけ?
ウロウロとしながら必要な物を探して集めていく中村先生。
最後に玄関に飾ってあった家族写真を持って家を出た。
急いで車に乗り込むと、携帯電話が鳴る。
二戸 梨杏からだった。
携帯電話に出る中村先生。
「はい、もしもし。どーした?」
弱々しい二戸 梨杏の声。
「先生―、もう帰ってくるの?」
「ああ、今ちょうど車に乗ったところだけど」
「………あのっ。虫がうるさくて困ってるんです」
「何の虫なんだ!?」



