「違う。エンマコオロギ。バッタ目で体長20ミリってとこ。オスだ!」
「こんな時に…、生物の授業なんかもういいよ!でも、どうしてコオロギが…!?」
「このコオロギは小春の好物なんだ」
――小春の好物……。
梨杏の想像の中の小春が髪の毛を逆立てながらコオロギをバリッバリッと音を立てて美味しそうに食べる。
ゾッとする。
中村先生が捕まえようとするがエンマコオロギは跳びはねながら逃げ回る。
ピョンピョーン・ペタッ。
あれっ!?
二戸 梨杏の顔面にエンマコオロギが貼りついて止まってしまった。
両目を真ん中に寄せてエンマコオロギを見る二戸 梨杏。
「ギャッーーーーーーツ!」
マンションの全室に響き渡るぐらいの大きな叫び声。
叫び声と共に倒れて失神した二戸 梨杏。



