「梨杏、先生のそういうところ、だーい好き!」
「俺、…そんなたいしたことしてないけど」
冷静でクールな中村先生。
二戸 梨杏が口をとんがらせて小さな声で呟く。
「もう、梨杏だけの先生にしたい……」
「ごめん。今なんか言った?俺、聞き取れなくて」
ちょっと焦る、二戸 梨杏。
「別に……、なっ何も言ってませんよ……」
「二戸、俺とお前は教師と生徒の関係だ。一緒に暮らす事になっても、いいか、それだけは忘れるなよ」
その言葉を聞いた二戸 梨杏はしょぼんとした顔で腰に回していた手をはなして後ろに下がり中村先生との距離を少し作った。
「ごめん、……先生。私、先生の生徒って分かってるよ。そんなに子供じゃないから――」
今度はぷすっとすねた顔をして下を向き足元にあった小さな灰色の石ころをコツンと軽く蹴る二戸 梨杏。



