あれから、だいぶ時間が経った。
薄明かりの街頭の下、ズボンのポケットに手を入れて確かめた。
――俺の白いハンカチ。
まだ少し湿気ているけれど、これぐらいなら大丈夫だろう――。
まぁ、大丈夫な事にしよう……。
ちょっと、このハンカチを使うのは酷な気もするが、二戸がパンダみたいな酷い顔をして道を歩くよりはいいだろう。
よしっ、10秒以内に拭こう!
10秒以内に拭き取れば、ハンカチに染み込んだ校長先生の汗の匂いもきっと気にならないはず。
すぐにこのハンカチで目の周りを綺麗に拭くから。
「すぐに終わるから、動くなよ」
目を瞑りながら嬉しそうな顔をしている二戸。
そういや、高校の時にいた彼女もキスする前にこんな顔をしていたような気がする?
わりぃ、二戸……。
俺、こんなハンカチしか持っていなくて――。



