「あ、その本」
女の子は本を見つめ呟いた。
手に持っていた本を見せ、これ?と言った。
「はい!すいませんが…返してもらえますか?」
「あ、ごめんね。はい」
差し出すと、女の子は駆け寄ってきて満面の笑みで受け取った。
「ずっと探してたんです!よかったぁ~」
安堵の息を吐いているこの女の子はとても可愛く見えた。
「ありがとうございました!」
こんなに後輩に感謝されたことはなく、なんだか照れる。
この本が相当大事なんだろう。
胸の前で抱き締めている。
「いや、うちにお礼を言わないでよ。あ、このシャーペンも借りちゃってた。ありがと」
ピンクのシャーペンを差し出す。
女の子は受け取りパラパラと本をめくり、あるページに挟んだ。
それを見ててふと思った。
「3番に異性の名前を書けっていう占い。結果は何なの?」
「それは…」
呟きながら、ページをめくって言った。
「好きな人です!」
この子は恋をしているんだろう。
弾けんばかりの笑顔で言ったのだから。
「好きな…人…」
颯…。
自分の頭が追いつかない。

