『無花果の母親?』

『知ってんの?』

『そう言われたから、こんな怪我して此処来てやってんだろ』

『生意気な小僧ね』




薄暗く狭い部屋で、それでも冷静に普通と変わらない会話を続ける男は、零。



『・・・・・・龍が遣りすぎたみたいね』

『まぁ良いってことよ。俺も暴れたし?』



へらりと笑う。
そいつの腹の下は、血の海だ。



『・・・・・・・・・・・・何で大人しく遣られたの』

『大人しくした覚えはないけど』






薄い鉄格子越しに、仁王立ちしている菖蒲を見上げた零は笑いながら言う。






『だって、本物の無花果の母親なんだろ?』



さも余裕だと言う様に口角を上げ、首に纏わり付いているネクタイを落とす。



『だから、?』

『だってアイツよぉ、聞いた話じゃ親に捨てられたらしいし。その顔が見たかったっつー事だぜ』

『捨てたのは私じゃないわ。あの子達の父親』




菖蒲も、飄々としている零の言葉に腹を立てる様に手に力を込めた。長い爪が掌に食い込んだが、気にしない。