それを大して気にした様子もなく、空羽は掴んでいた手を離し、浴槽に凭れ掛かった。
真水が、服の上から空羽を濡らす。
ばさり。
濡れて体温を奪っていく衣類を剥ぎ取られて、張り付いた髪を払われる。
ぐ、と口を結んだ空羽。
「・・・・・・・・いいよ、私を抱き殺してもいい。だけど、それで零が居なくなったら、私は龍を殺す。」
靴下に忍び込ませていたナイフを素早く取り、龍の喉に当てる。
「凶暴な女ほど、壊し甲斐がある」
そのナイフを取り上げ捨てた。
哀しい音が浴室全体に広がる。
奮える体を震える体に当てて、龍は空羽の肩に咬み付いた。
流れる真紅の血は、愛なのか。
いや、愛から生まれた漆黒の血。

