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それからも時は経ち。
春から初夏になり始めた頃。
ガチャ、ガチャン。
龍の部屋で、無花果ただ一人が動いていた。
その表情は、冷たく。
脱がされた服を着て、落ちている靴下を履く。
ぐしゃぐしゃに乱れた長髪はそのままで。
それと隠されているようにあったナイフを靴下の間に忍ばせて。
靴は無いから裸足でいいか、とそのまま玄関に立った。
「っぐ・・・・・・・・・・・」
想像通り鍵がかかっているドアノブに、体当たりをする。
体に痛みは走ったが、代わりに呆気無く金具の一部が落ちた。
ガチャ・・・・・・・・・・・・・・・、
恐る恐る、ドアに手をかける。
「そ、と・・・・・・・・・・」
嗄れた声で、やっと呟けた言葉。
生暖かい風が頬を撫でた。
一歩、恐る恐る足を踏み出す。
マンションから全速力で飛び出し、少しだけ歩いた所で空羽は外を見渡した。

