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「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(やっぱり・・・・)
2年経った時。
最近騒ぎが少なくなって、今だ治安は悪いものの以前よりはマシになった東部の道をふらりと歩き、迷う事無く辿り着いた廃墟ビル。
そこに居る、美しかった女は、屍と化して。
周りに虫が集る。
「そうですよね・・・・生きてるなんて事は有り得ないわよね・・・。」
彼女――香織は、仕事を抜け出してきたままの格好で屍を前に視線を落とした。
さっきまで明るかった表情は暗くなり、また来た道を帰る。
青が垣間見える曇り空にしかめ面をしてみた。
「律様が、アメリカからお帰りになりました・・・・・・・・・・・無花果様・・・・・」
届かぬ思いを空に吐き出して。
香織は喜報を誰かに知らせたくて、昔会った女の所に行ったのだ。勿論、死んでいたが。
一番知らせたい相手に届ける事が出来ない。
自分の不甲斐無さに唇を噛み締める。

