「零・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
龍を起こさないように、そっと呟く。
記憶の中で鮮明に思い出せるのは、零との過去。
こんなに想っているのに、違う男に抱かれている自分を嘲笑する空羽。
(みんな、みんな私から居なくなっちゃった。
仁叉もあれから見てないし、零は離れて行ったし。兄さんも収容所・・・・・・・・・私にあるものは何だろう)
いつの間にか太腿にできた紅い痣を不機嫌な顔で見遣る。そして、拳に力を込めた。
(零との思い出は、私にある)
抱き締め合ったり、本気で殴り合ったり、喧嘩したり、キスしたり、それから1回だけのセックス。
全部、覚えてる。
毎日、空羽はずっと同じ事を考えていた。
(ぜろ、零、ゼロ。)
いちじくって、貴方だけに呼ばれたい。
だから、龍に空羽と言う名前を教えた。
無花果。
零の声色を思い出しながら、空羽は眠りにつく。

