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一方その頃、香織は休暇を貰い外に出ていた。
私も世界を知ってみよう、と言う上司思いの発想からで。
「う・・・・・・・・・・・、」
廃墟ビルの2階。
無人だと思わせるほど灯りは無く、物静かなビルに人影があるのを知り、興味本位で入ってみたのだ。
(何、これ・・・・・・・・・・。酷い)
高いヒールで、古びた床を鳴らした。
「・・・・・・・・あ、の・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
香織の前には、女と思われる人間。
だが、服は冬だというのに薄いワンピース一枚に、薄い布で包まっている。
髪は長く、真っ黒だ。
「だ、れ。」
「・・・・・・・・・・、」
細く窶れ、腕は青白く骨の様。
「・・・・・・娼婦でもしてたのですか?」
「・・・・・・・・・・・何、それ。当たり前でしょう?」
身形のわりには整った顔立ちで、乱れた服装を見るとそれらしく思えた。
「・・・・当たり前、ですか・・・」
「お姉さんは、そう言う仕事じゃ無さそうね・・・・。もう、自分が女で生まれたことを酷く後悔しているわ。散々弄ばれて、自分一人ろくに物も食べるお金も無いもの」
気だるそうに、壁に寄りかかる。
そして、自暴自棄に吐き捨てた。
「生きてる意味も無いのに何で生きてるのかが分からなくなったわ」
かつ。
香織の靴音が響いた。

