「あのね、空羽。10歳の頃君はナイフを使ってたよ。」
「・・・せこい。しかも私今ナイフとか持ってない。」
「せこいって・・・・。あと、ちょっと教えとくね。」
その格好のまま、再び無花果の手首を結んだ。
「え、やめてよ」
「違う違う。今度は俺が解くの。」
またきつく結ばれた縄を呆れた顔で見る無花果。
「・・・だから、秘伝の技を教えてあげようと思ってたの。ここ、縄の重なった部分の上から2段目位。そこに指を捻じ込んで、広げると一番楽に縄が解けるよ」
重なり合った縄の段をひとつ、ふたつと数えてぐい、と指を入れた。
「いたたたたッ!!ちょ・・・」
「はい、とけたー。」
無理矢理捻じ込んで、奥にある縄を引っ張る。それだけで絡まっていた縄はするりと解けた。
「・・・・・・・え、凄い。」
「極秘ね。万が一用に」
落ちた縄を指で絡め取り、ゴミ箱に捨てる。
「・・・・・きっと。役立つ時もあるから」
「・・・・?」
肩を掴み、無花果の唇をべろりと舐めた。
「っ・・・・・!」
「朝から空達ヤってたでしょ。動きが鈍い。」
頬が赤くなった無花果を見て溜め息をつく仁叉。
「・・・・とんだ不良娘に育ったね」
「・・・・うるさい、」
眉を寄せ、不躾だとばかりに嫌悪感丸出しの声を出す。
「・・・・・・・・俺の所へすんなり来たって事は覚悟はついたんだよね?」
「うん。」
触られた頬を嫌がることなく受け入れる。

