「怖いんだ、怖い・・・・・・ずっと、何処か自分の奥を視られてるみてぇで、怖い・・・・・・」
無花果の眼が少し、ほんの少し零に向けられる。
「・・・あの時・・・・・乱闘の時・・・俺、零に会った気がするんだ・・・・・・・」
良いせかす様に、零が無花果の髪を絡めた。
「自分でも、記憶が曖昧で有耶無耶なんだ・・・・・
確か、薬、使われてて・・・・あんま覚えてないけど・・・・それで、全身が痛いままで見たんだ。」
―――人々が集まる民家から、一人だけ飛び出す少年。
「分かんねぇ、とにかくソイツだけが印象的で」
―――追おうとしても、届かない。
「薬を使って最高潮に体が出来てたのに、追い付けなかった」
―――巧みにすり抜けて。
「あの時も、自分が自分じゃ無かったみたいで怖かった」
―――まるで、自分には一生追い付けられない様な馬鹿にした、嘲笑と、軽蔑の眼。
「零が、怒ってるんじゃないかって・・・・、
たまに、零は俺を殺しそうな目付きで見るんだ」
短い髪が、零の口元に運ばれる。
「いつまで経っても、零には追い付けられない様な気がして」
吐き出される、醜い本性、真実、実態。
「手、掴まれた時の痣見ると怖くなってきて、・・・・」
するりと後頭部に入れられた手に上を向くように反らされ、その上から零が重なった。
「・・・・・・・・・・・・・ん・・・・・、」
びくりと無花果の体が引き攣る。
力強く押し付けられた唇に、紅く染まる互いの唇。

