「痛い」


不機嫌を露に零を脚で押す。
みしみしと、ベッドのスプリングが鳴った。


(何だってこんな不機嫌なんだよ零は)


今も真上から自分を見下ろす存在に腹を立てる。



「ぜ、」

「無花果さぁ、仁叉にあんな事されておいて、何にも思わねぇの?」

「・・・・・・・・・・・・・?」


一瞬、何が、と思う無花果。


「あぁ・・・・・・アレね・・・、」


大した気も無いような、諦めている様な表情。


「別に。力や技で仁叉に勝てる訳が無ぇし、そん時は何か意識も朦朧としてたし・・・・・・・あんな屈辱は御免だが、一応仁叉には恩がある訳だから抵抗はできない。」


すらすらと台本に書いてある台詞を言うような喋り方で続ける。


「そうやって、ずっと教えられてきた。仁叉には、抵抗してはいけないって。」

なんの悪びれも無く、零に向かう。


そして、零に手を離せ、と言う前にその言葉を塞がれた。


「っ・・・・・・・・・・・」



重なる唇。


「ぜっ・・・・・・・・・」


突然の事に驚いたのか、反射的に無花果が零から逃がれようとする。


「動くな」

「・・・・・・・・・、!」


開いている片手で顎を掴み、顔を拘束する。


(気持ち・・・・悪い・・・!)


零の吐息が口内で溶ける。と、同様に無花果の荒い吐息も零にかかる。



「ひ、 」


悲鳴染みた何とも言えない声が口から漏れる。


「や ・・・・・・ め!!」


びくんと反応する無花果を更にきつく押さえつけた零。