私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

「ん?」

とっさに横を向いて、視線を断ち切った。

何ごともなかった素振りをしたが、なんでだろう、顔がすごく熱くなっている。


「砂糖は要るか?」


私はそんなに軽い女じゃない。派遣で働いてるから尻が軽いなどと思われてはたまらない。

だいたい、私の好みは男らしくて、ワイルドな中にも清潔感があって、まっとうな社会で生きてるような──


「要らねえの?」


声とともに、とつぜん目の前に春樹の顔が現れた。

「きゃあっ!」

とっさにそう叫ぶと、後ろにのけぞって倒れた。

「大丈夫か?」


春樹は動転している私を見下ろすと、口をへの字にまげて、あきれるように言った。


「昨日は何にもなかったから、安心しろ」


言うなりキッチンに戻ると、出来立てのコーヒーをカップに注ぎ始めた。


「砂糖はいらねえんだな」

少し苛立った声に、私は

「ちょっと入れて」

とだけ、答えた。