私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

(髪が長すぎるしさ)

私の好みは、短髪で清潔感がある髪型だ。

インスタントかと思っていたが、コーヒーメーカーで淹れているのは意外だった。

かぐわしい香りに、最近、美味しいコーヒーを飲んだ覚えがないことに気がついた。


(ううん、私は紅茶派だもん)


そうだ。私はコーヒーが好きというほどでもない。


それにしても、奴は私のほうを見向きもせずにコーヒーを淹れている。


(痩せてるなあ)


脇の大きく開いたシャツから、腕のつけねのラインが覗き見える。

小肉中背なんて言葉はあるのだろうか。しかし、意外に必要な筋肉はついているようだ。


(お、意外とすね毛薄いんだ)


膝下までのラフなショートジーンズからのぞく足は、締まってて精悍だ。

それにしても、


(なんで無視してんのよ)


こちらばかりが視線を送ってしまうのは負けたような気がする。

それならばと、奴の顔に視線を送ってみた。


横顔のアゴのラインは少し華奢だった。

鼻先がつんと上を向いていて、一重だが、涼しげな眼。


(結構……イケてる……かも)


そのとき、不意に春樹の目線が私に向いた。