私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

診察を早く受けたかった。
が、住所を書く欄で指が止まった。

(仕方ない……)

躊躇しているひまはない。

公文書偽造などにはならないのだろうか。そんな不安もあったが、この際そんなこと関係なかった。

その欄には、以前母と住んでいた住所を書き込んだ。

しかし、問診票をうけとった看護師は、一瞥しただけでもう一言付け加えた。

「なにか身分を証明するものはお持ちですか?」

私ははっとして言葉をうしなった。

「免許証とか、住基カードとか」

そう言われても無いものはない。

日本と言う国に生きていながら、働いてお金を稼いでいながら、私は何者でもないことを突きつけられる。

すべては住所。

それがないと、この国では何もできないのだ。


「あの、今日は持ってきてなくて……」

ようやくその言葉を口にすることができた。

看護師はフンと鼻をならして、不満をあらわにした。

「最近こんな人多いのよね」

「あの、お金ならありますから!」