私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

「雪ちゃん、お客さん」

カウンターの同僚が私を呼びに来た。

受付に顔を出すと、でっぷりと太った金髪の男に、サングラスをかけ、ストライプのスーツに身を包んだ男の二人が立っている。

(だれ?)

いつの時代のファッションだろうか。それより、こんな見るからに怪しげな連中に知り合いはいないはずだ。

「あの、海野ですけど……」

私がおずおずと声をかけると、二人は遠慮もなく私の両脇にたち、肩に手をおいてきた。

「あんたが娘さんか」

「お母さんは残念だったねえ」

その馴れ馴れしさに嫌悪が走る。私は、反射的に手を払いのけた。

「おうおうおう、気が強いじゃない」

サングラスの男は、うすら笑いを浮かべてそう言った。

「何なんですか、誰ですか」

「何ですかはねえだろう。あんたのお母さんの借金、返してもらいにきたんだよ」

「借金……」

その言葉を聞いて、ずんと胸が重くなる。

パートの同僚の話を聞いて、なんとなくだが、漠然とした不安があったのだ。その不安は最悪なかたちで私の前にあらわれた。

男たちが取り出した借用書には、200万円という金額が記されている。

「200万……」

私は息を飲んだ。しかし、それだけではないという。

「遅延損害金に、増えに増えた金利ね。合わせて500万になってんだよ」

「ちょっと、ムチャクチャじゃないですか」

「金借りて返さねえほうがムチャクチャだろうが!」

態度を急変させた男は、社内に響き渡るほどの声をあげた。

心配した社員が、ちらほらと顔を覗かせたが、男たちを見てすぐさま首を引っ込める。

「と……とにかく、ちょっとこちらへ」

こんな所で騒がれてはたまらない。隣のブースには来客だっているのだ。

私は外へ出ようとしたが、男たちは動こうとしなかった。