などと思っている奴もいるだろうが、こっちだって男に媚びて仕事をしたいと思っているわけじゃない。

勝手に妄想を膨らます男のほうに問題がある。

女は結婚相手を探しに会社に来ている、などと言うが、男のほうがよっぽど下心を仕事に持ち込んでいる。

性の対象としか見ないから、誰が仕事をしているかなんて、てんでわかっちゃいない。


(男ってホント、馬鹿ばっか)


男にちやほやされてる女を見て、嫉妬がまったくないかと言えば嘘にはなるだろう。

しかし、そんなことで有頂天になっている自分は、私の求めている自分ではないのだ。


このとき、私は自分の心の奥底に植えつけられていたものに気づいていなかった。

それに気づいたのは、皮肉にも私に救いの手が差し伸べられたときだった。

「ちょっと持ちましょうか」

痛みをこらえて椅子を抱えていた私を見かねたのか、作業員のひとりが私に声をかけてきた。

「あ、大丈夫です」

気持ちはありがたかったが、甘えるほどではない。

(あんな女とは違うんだから)

という反発心もあっただろう。

「いや、重そうだし──」


そう言って、差し伸べられた手。