「超キツイんだけどー」

そんな愚痴を堂々と吐きながら、椅子を一脚ずつダラダラと引きずっていた。

(時給同じなんだからさ)

肩の痛みは理由にならない。が、そんな私でも四脚ずつは運んでいる。

「重いよ、何とかしてよ」

ついにその女は椅子を投げ出した。これが日雇いの軽さだ。

常識ならば、その時点でこの女はお払い箱だ。それがまた日雇いの厳しさでもある。


しかし、担当者はその女のそばに駆け寄ると、別の指示を出していた。

「じゃあさ、この線からずれてる椅子を綺麗に並べてくれる? うん、それだけで良いよ」

笑顔を満面にたたえ、嬉しそうに支持を出す男は、下心も丸見えだ。

(気分悪いんだよね)

私は片方の口端を吊り上げると、荒々しく椅子を置いた。

「ちょっと、ちゃんと線に合わせて並べろよ」

その音に振り向いた担当者がつばを飛ばした。

(それはその女の仕事だろ)

私はその声が聞こえないふりをして、さっさとトラックに戻る。


男の中には

「女は仕事できなくても、多少可愛かったらチヤホヤされるだけで勤まるんだから」