(堕ちるとこまで堕ちたのか)


そんな考えが頭をよぎった。

これからどんどんお腹は大きくなってゆく。そうなれば風俗店で働くこともできなくなるだろう。

もちろん、そんなお腹を抱えては日雇い派遣でも同じだ。

(そして赤ちゃんを産んだとしても……)

その先は考えたくもない。


まだ三ヶ月。引き返すなら今しかないが、それでもその費用さえない。


(だめ、私は産むって決めたんだから)


この子を堕ろすところを想像するだけで、悲しみがあふれてくる。

そんなことが出来るわけはなかった。

今の私の生きる希望は、この子しかいないのだから。唯一、何ものにも代えがたい宝物なのだから。


私はカップスープのお代わりを取りに、ボックス席を出た。

もうゲップが出るほど飽きた味だが、ジュースだと糖分が多すぎて体に悪い気がするのだ。


カップに注いでいるとき、背後に


「あの」


という声を聞いた。