(あっ!)

と、思う間もない。倒れる先には重い鉄製のハンドリフターが置いてある。

私の体はそこに叩きつけられた。


あわてて駆け寄ってくる社員たちに、突き飛ばした若い女性社員は

「ちょっと肩を押しただけですよ。コイツがぼーっと突っ立ってるから……」

と、言い訳を繰り返していた。


社員たちも怪我を気遣うというより、迷惑そうな顔で

「とにかく詰所に行って、怪我を見てもらって」

というだけで、私を出口まで連れて行くと、外に放り出した。


(怪我って……)


その時、初めてまじまじと自分の体に目を移す。

そこには、肩に血がべっとりとついた作業着があった。


(やばい)


日雇い派遣にとって、体だけが資本だ。それに支障をきたすと、さらに転落してゆく速度に歯止めがきかなくなる。

これまで、どれだけ体を壊したために転落していった人間を見てきたか。