私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

その手のひらが、ねっとりとした感触とともに、悪臭を放った。



(まさかこいつ)



その想像をするだけで、怒りとともに、胃のなかの消化物が口から飛び出した。

「うげぇ!」

「おい、大丈夫か」

中村がすぐさま背後にまわり、私の背中をさすりはじめた。


「触らないで!」


その手を払いのけると、私は半狂乱にわめく。


「出て行って、早く!」

「おい、落ち着けって」

「早く!」


あまりの大声に、中村はたじろいだ。躊躇するように立ち上がると、

「ふとんのクリーニング代、給料から引いとくからな。用意してすぐに出てこいよ」

とだけ言い残して部屋を出た。


私はすぐさま風呂に駆け込むと、顔にシャワーを当てて、何度も口を洗った。



何度も。何度も──



過去の苦い記憶に、今さらながら悔しさがこみ上げてくる。そのとき、突然誰かに突き飛ばされて我に返った。

「どいて!」

ベルトコンベアの途中で、流れてくる製品が詰まっているようだ。次々とペットボトルが外にはじかれていた。

その処理をするために駆け寄ってきた女性社員にとって、私は邪魔者でしかない。

何の構えもしていなかった私は、その突き飛ばされた反動で足をもつれさせた。