私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

(もう駄目だ)


その作業を初めて、たった一時間ほどで腕が上がらなくなった。大の男でもよほど体力に自信がなければ出来ないという。

同じ作業をしている男性派遣社員は、そう言って気の毒がってくれた。

次に持ち上げた袋を抱いたまま、私の足がふらつく。倒れそうになった私を支えてくれたのは、その男性社員だった。


「ちょっと休んでなよ。女には無理だ」


そう言うと、物凄い勢いでふたつの攪拌機に原料を放り込んでゆく。

本来は二人でやる作業をひとりでやるのだ。その優しさに、久しぶりに心が温かくなった。と同時に、どうにも申し訳ない思いで自分が情けなくなる。

ここにきて初めて、私は涙を流した。

どうにもならない自分の境遇が悔しくて仕方ない。男性社員はそんな私を見て、息を切らしながら声をかけてきた。


「中村の誘いを断ったんだろ」


なんでそんなことを知っているのだろうか。


「あいつの誘いを断った女の子は、いつもここに回される。そしたら二つの選択しか残されないよ」


一定量入れ終えた男性社員は、一息ついて、汗を拭きながらこちらへ顔を向けた。


「あいつと寝るか、やめるか……しかね」


そんなパワーハラスメントがあれば、普通の会社であれば大問題になる。

しかし、ここは派遣会社だ。


世間の常識が通用する世界ではないことを、ここで痛感させられた。