寒々とした空の下、ワンボックスは都市部を離れ、郊外をひた走る。

誰一人として言葉を出さない車内は、その空以上に暗い雰囲気が漂っていた。

まるで、奴隷船に積まれているような気分だ。


期待はない。不安だけを胸に抱いて、雪景色の中を走る車に揺られていた。



「えーと、ここが海野さんの部屋ね」


管理社員の名前は中村と言った。その中村が案内してくれたのは、3DKのアパートの一室だった。


「あの、1ルームって聞いてたんですけど……」


一瞬、自分ひとりでここを使うのかと思ったのだが、すでに先住者がいるのはすぐに分かった。


「そうだよ。1人1ルームだよ」


(話が全然違う)


ここははっきりと言っておかなくては。


「あの、1ルームってのとは違うと思うんですけど」


おそらく、誰しもが同じ質問をするのだろう。中村の答えには慣れたものがあった。


「以前はひと部屋を二人で使ってたんだから、待遇良くなったほうだろ。それともどうする、いやならこのまま帰ってもいいんだよ。もちろん交通費は返してもらうけどね」


(そんな……)


私は何も言えなくなった。

完全にだまされた怒りよりも、むしろ、それをつき返せない自分が情けない。


「ちゃんとした1ルームにするとね、男を連れ込むやつが出てきて、風紀が乱れるんだよ」


風紀が乱れるとはどういうことだろう。プライベートな時間は恋愛をしようが何をしようが自由なはずではないだろうか。