私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

その日の帰り。更衣室から出ると、詰所ではひと悶着が起きていた。聞き分けのない作業員が、またトラブルを起こしているのだろうか。

ここでは良くあることだ。

しかし中を覗くと、井原につっかかっているのは、なんと春樹だった。


「おい、井原。こんど調子に乗ったことしたら、こっちにも考えがあるからな」


そのモノの言いように私は目をみはった。

あんなことを言えば、すぐに飛ばされてしまうかクビになるのではないだろうか。

春樹は確かに誰に対しても物怖じしない性格だが、まさか自分の雇い主である派遣会社の社員にまで、そんな態度をとるとは思ってもみなかった。


「ああ、わかったよ」


完全に立場が逆転したような光景に、私はあぜんとした。


春樹は自分の身が心配じゃないのだろうか。


そんな私の不安をよそに、詰所から出てきた春樹は、私を見つけると笑顔をみせた。


「はい、終了」


そして何食わぬ顔で階段を下りてゆく。私は慌ててその後を追った。



タネを明かせば簡単なことだった。

違法性のある仕事内容を、春樹はよく理解しているのだ。法律に触れることをやっている派遣会社では、労働基準監督局からの監査を常に恐れている。

ここでは、請負業者としての肩書きで労働者を送り込んでいるにもかかわらず、内容は派遣社員とかわらないという偽装請負がその最たる違反行為だ。