私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

私から言わせれば、社会の厳しさから目を背けつづけて、最後にたどり着いた人間たち。そんな人間も多いから、社会から向けられる目が冷たいのも仕方ないと、最近は理解している。

でも、夏子さんには、そんな空気は微塵も無い。それはどこか春樹に似かよったものを感じさせた──




春樹は仕事に厳しかった。職場では私にも容赦はない。

急に止まった設備を前に呆然とする私を押しのけて、春樹が設備の横にまわって何かをした。

「カット刃が空っぽになってるだろ。ちゃんとチェックしながら設備動かせよ」

今まで沈黙を保っていた設備が生き返ったようにモーター音とエアー音を響かせ始める。また補充品のチェックを見逃してしまっていた。

「そんなこと言ったって、すぐには春樹みたいにできないよ」

「ここでは岬だろ」

「ごめん」

「それにもう三ヶ月も経ってんだ。いくらなんでも出来ないとおかしいだろ」


そうは言っても出来ないものは出来ない。


何十枚という電極が入ったゴムのような小さな板を、電子顕微鏡でカット位置を合わせながらカット操作をするのだが、さらにカットした後のウエハをバラバラにする作業を、次のカットが終わるまでに終了させなければならない。