「ま、色々あるからね、話せないことだってさ。気にしないで、いまの話は忘れていいよ」
しかし、そう言われるとなぜか話したくなってしまうのは、人間の不思議なところだ。私の口が、思わず滑っていた。
「妊娠してるんです」
ぽつりと洩らした言葉に、立ちあがろうとした夏子さんの動きが止まった。
そして、まばたきをやめた目で、私の顔をじっと見つめる。
緊張で場の空気が凍ったように感じる。この時点で、私は言ってしまったことを半分は後悔していた。
しかし、マイナス思考の予想をうらぎって、夏子さんの表情は笑顔で崩れた。そして、ひとこと
「おめでとう」
そう言って、私の手を力強くにぎりしめてくれた。
思いがけなくまぶたが熱くなる。それはすぐにあふれて畳に染み込んでいった。自分でもその言葉がこんなに嬉しいものだとは思ってもみなかった。
「早く堕ろせ」
「なんで避妊しなかったの」
「いい加減な生活してるから」
「バカじゃねえの」
誰もが同じような言葉で、お腹の子供を否定した。誰も認めてくれなかった。
だから初めてだった。
この子を祝ってくれたのは、夏子さんが初めてだったのだ。
それが何よりも嬉しかった。
しかし、そう言われるとなぜか話したくなってしまうのは、人間の不思議なところだ。私の口が、思わず滑っていた。
「妊娠してるんです」
ぽつりと洩らした言葉に、立ちあがろうとした夏子さんの動きが止まった。
そして、まばたきをやめた目で、私の顔をじっと見つめる。
緊張で場の空気が凍ったように感じる。この時点で、私は言ってしまったことを半分は後悔していた。
しかし、マイナス思考の予想をうらぎって、夏子さんの表情は笑顔で崩れた。そして、ひとこと
「おめでとう」
そう言って、私の手を力強くにぎりしめてくれた。
思いがけなくまぶたが熱くなる。それはすぐにあふれて畳に染み込んでいった。自分でもその言葉がこんなに嬉しいものだとは思ってもみなかった。
「早く堕ろせ」
「なんで避妊しなかったの」
「いい加減な生活してるから」
「バカじゃねえの」
誰もが同じような言葉で、お腹の子供を否定した。誰も認めてくれなかった。
だから初めてだった。
この子を祝ってくれたのは、夏子さんが初めてだったのだ。
それが何よりも嬉しかった。



