私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

「運送会社といってもね、この時期限定だけど引越しの仕事なの」

「引越しですか……」

テンションの下がった私の顔を見て、夏子さんは説明をとめた。

「嫌かな?」

「いえ、嫌じゃないんですけど……力仕事は……」

「そんな贅沢言ってらんないじゃん」

「そんな意味じゃありません!」

軽蔑されたように感じて、私の声が少し大きくなった。

「じゃあ、どういう意味?」

なにか感じたのだろう、夏子さんのトーンが落ちる。


私は言葉を呑んだ。


正直、妊娠の話など言ったら呆れられるかも知れないという不安があったのだ。

普通の社会人以上に、実情をよく知っている人間であれば、私がいかに無謀なことをやろうとしているのかは、分かりすぎるほどわかるだろう。

もしも、


「バカじゃない?」


と、ここで言われたら、私のダメージは相当大きい。それこそ、これから生きてゆくことを否定されるのに等しいものだ。


畳をじっと見つめる私を、夏子さんは深追いしなかった。