「きっとワケがあるんだよ。お母さんをそんな風に言っちゃダメ」
子供に言い聞かせるような口調だった。
「騙すつもりじゃなかったのよ。それは雪が一番わかってるんじゃないの」
私はなにを言おうとしていたのだろうか。昂ぶった感情がおさまると、自分の感情が突然暴走しようとしていたことに震えがきた。
恨んでいるわけじゃない。
このどうしようもない状況で、私は不満のはけ口を探していただけだ。そのはけ口を母に向けようとした自分は、人間として最低だ。
私は、感謝を忘れた最低の人間だ。
いつの間にこんな人間になってしまったのだろう。長く辛い日々は、人の心を強くする
だけじゃなかった。
こんなに醜くもしてしまうのだ。
「ま、気持ちはわからないでもないけどね。でもね、自分を産んでくれた母親はさ、やっぱり恨んじゃいけないよ」
静かにそう言った夏子さんを見て、私は彼女の子供のことを想った。この年だったら生んでいるだろう。
しかし、聞くことは出来なかった。
たぶん、重い過去を背負っているはずだ。彼女の目が、そう訴えているようだった。
子供に言い聞かせるような口調だった。
「騙すつもりじゃなかったのよ。それは雪が一番わかってるんじゃないの」
私はなにを言おうとしていたのだろうか。昂ぶった感情がおさまると、自分の感情が突然暴走しようとしていたことに震えがきた。
恨んでいるわけじゃない。
このどうしようもない状況で、私は不満のはけ口を探していただけだ。そのはけ口を母に向けようとした自分は、人間として最低だ。
私は、感謝を忘れた最低の人間だ。
いつの間にこんな人間になってしまったのだろう。長く辛い日々は、人の心を強くする
だけじゃなかった。
こんなに醜くもしてしまうのだ。
「ま、気持ちはわからないでもないけどね。でもね、自分を産んでくれた母親はさ、やっぱり恨んじゃいけないよ」
静かにそう言った夏子さんを見て、私は彼女の子供のことを想った。この年だったら生んでいるだろう。
しかし、聞くことは出来なかった。
たぶん、重い過去を背負っているはずだ。彼女の目が、そう訴えているようだった。



