「そんなシケた顔するな。俺はもうすぐ払い終えるからよ」


春樹は、しょげた私の頭をひと撫ですると、ペンダントを手にとって、私の首にかけてくれた。


「お前が雪で俺が春樹だろ。雪に春を運んでやるから、安心しろ」


そう言って笑う春樹の目には、まだ人生をあきらめていない野心がみなぎっていた。


春樹は他の誰とも違う空気をまとっている。

その横顔を見ながら、なんとなく解説してみたくなった。

「遠くを見ていながら……」

いきなりしゃべり始めた私に、春樹は怪訝な顔を向けた。

「足元もしっかりと見据えていて」

「目標があるからな、失敗しねえようにしてんだよ」

「誰にも流されず」

「唯我独尊ともいう」

「強くて」

「弱みを見せないだけだ」

「何よりも真剣に生きている印象を受ける」

「真剣に生きなくて、人生になんの意味があるんだよ」


それが春樹の人生観なのだろう。それをサラッと言えるような年齢には見えないのだが。


たぶん私は、春樹のそんな不思議さに惹かれたんだと思う──