私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

しかし、私の横で息を荒くしている女性のほうが、数倍苦しそうだ。

無理も無い。

私よりひと回り年を食っている印象を受ける。

この年齢で、あれだけ走れば体が悲鳴を上げても不思議は無いだろう。


「本当にありがとうございました」

「はは……気まぐれだから」

「だって、あんなこと」

「なんかさ……たまたまあの場面に出くわしてね……いつもやられっぱなしでたまるかって……なんか急に頭きちゃってさ」

「でも、そしたらあなたまで……」

「そんときはそんとき。どうせ……失くすものなんて無いんだから。それにしても……ビール瓶って……意外と割れないんだね」

そう言うと、その女性は苦しげながら笑顔を見せた。

そしてしばらく息を整えると

「闇金だろ?」

と、言い当てた。

「はい」

「家族はいるの?」

「誰も」

「だったら、つかまったら、生命保険に加入させられて殺されるだろうね」


その言葉は私の心を重くした。

いったんは逃れたと思った闇金だったが、ひょんなところから尻尾をつかまれてしまった。