私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

「なんとか……まいた?」


そう言って振り返った女性の顔を見て、私は驚きをかくせなかった。


「あなたは……」


夕方、事務所の入り口ですれ違った女性だった。


「単なる同業者よ」


そう言ってにやりと笑うと、女性はその場に倒れこんだ。

私はあわててその体を起こす。

「大丈夫ですか!」

「ちょっと……休めば」

思いのほか息が荒い。

こんな思いをしてまで私を助けてくれることに、不思議さと、大きな感謝で胸がいっぱいになった。

「追いかけてくるとマズイから、ちょっとこっちに……」

もはや自力で立てなくなっていたその女性に肩を貸そうと、背中に手をまわしてもちあげた。

その体が、ひどく軽いことに驚く。

まるで、中身がすっからかんになっているような錯覚を覚えた。


すぐ脇にある駐車場に入り、車の陰に腰を落とすと、私はようやく一息ついた。

急に運動したせいか、こめかみがズキズキする。