私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

その管理社員の後ろで、渡辺がほくそ笑んでいた。

私は渡辺を睨みつけた。あんな女の思い通りに事が運んだことが悔しくてしかたない。


しかし、その移動先というのは思いもよらない場所だった。

「2Fのカット工程に行ってもらうから」

「えっ?」

私は思わず聞き返していた。


その工程は春樹がいる工程だったのだ。


「なんでカットに移動なの!」


私たちの会話に耳をすませていたのだろう。それを聞くなり、渡辺が鋭い声をあげてかみついてきた。

「あっちは人が足らないからさ。テーピングは人が余ってるんだろ、渡辺さんも最近そう言ってただろ」

「カットには新しいひと入れればいいじゃん」

「そんなの、社員さんの決定なんだから仕方ないだろ」


いったい春樹はどんな根回しをしたのだろうか。

派遣社員にそんな権限はあるはずないが、どちらにしても渡辺の悔しがる顔を見るのは気分がよかった。

春樹にこんなことを言うと怒られるだろう。


「他人の不幸を笑う人間は、もっと不幸だ」


とかなんとか、分別臭いことを。


でも気分が良いのだから仕方ない。