私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

その性根の汚さに激怒して、その日は一日中仕事が手につかなかった。



「──って、どう思う?」

その夜、春樹の寮に行った私は、渡辺に対する怒りをブチまけた。

「そんなことにいちいち腹を立ててたら、自分を小さくするぞ」

春樹は文庫本を読みながら、私の話を軽く聞き流している。

「なに尊大なこと言ってんの。私が飛ばされたらどうするの」

「ないない」

「だって、付き合ってるのがバレたら飛ばされるって聞いたもん」

「俺がそんなことさせないって」

春樹はいつも自信満々で、私の不安など相手にしてくれない。


「雪、お前さ、心のどこかでこう思ってるだろ『私はあんたらとは違う』って」


確かにそう思っている。だけど、それを見透かされているのはあまり面白くはない。

「だろ?」

念を押す言葉に、私はしぶしぶ頷いた。


「ここに居る奴らは皆そう思ってる。自分だけは違うってな」


おもむろにタバコに火をつけた春樹は、一口吸うと、話を続けた。


「だから少しでも周りの誰かが幸せになると、こいつごときが自分より幸せになるなんて許せない……って思うんだな。普通の職場よりずっと根深い」