私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~

歩いていた道を引き返すと、そのまま階段を駆け上がる。そして、先ほど出てきた玄関のドアを激しくノックした。


(勝手に他人の人格つくって、納得してんじゃないっての!)


なおもドアをノックしていると、目の前のドアノブが回された。


そして現れた春樹は、

「帰り道がわかんないのか?」

と、言ってのけた。


その余裕に満ちた顔が、私の神経を逆撫でした。


「何んにもわかってないクセに、わかったような口きかないで欲しいんだけど」

「それを言うために戻ってきたのか」

「悪い?」

「悪かぁないけどさ──」

ドアが音を立てて閉まると、春樹の顔が影に沈んだ。


「俺を好きって言いにきたかと思った」


思いがけない言葉に、私の頭は混乱した。


(え……いま、何て……)


春樹の腕が、戸惑う私の肩越しに伸びて、閉じたドアに手をついた。


吐息がかかるほどの距離に顔がある。

私は、自分の息が荒くなっているのに気づかれないように、必死にそれを押し殺そうとする。


でも無理だった。


「俺が嫌いならこのまま帰ればいい」


私は何も答えられない。