午前6時の電車のホ―ムには
私とサラリーマンが1人
立っているだけだった



今日、この日のためだけに私は両親の反対を押しきって家を出てきたんだ
もう後ろを振り返ることは当分出来ない。


そんな決意を胸に胡桃は電車が来るのを静かに待っていた。


ガタンゴトン―――



小さな音は次第に大きくなり東京行きの電車が目の前に止まる
胡桃はそっと乗り込み辺りを見渡した。

周りには音楽を聞きながら寝ている人

新聞を読む人


(あ!あの本一回読んで見たかったやつだ!)


胡桃が気になっている本を読んでいる人


様々だった。しかし自分と同じ年代の人は居ない


(当たり前か…こんな田舎からオ―ディションなんて私しかいないね)


胡桃はため息をつきながら窓側の一番端っこに座った。


電車のスピードが次第に早くなる


それと同時に胡桃は故郷への後ろめたさと今始まったばかりの挑戦への期待で体が緊張していくのが分かった。



5つほど駅を過ぎた頃だろうか
突然電車の中の人々は次々に降りて行った


人混みでまみれているドアを見ていると胡桃はその人混みの中から
この世界で一番綺麗なものを見た


ひときわ目立つ白い肌

鼻筋の通った横顔

染めたとは思えないほど綺麗なゴ―ルドのベリーショ―トヘアー

そしてなんといっても見たことのないしなやかな足

まるで人間じゃないみたいだった。



違う緊張に駆られて目を反らす事が出来なかった胡桃はひたすらその綺麗な女の子を見ていた


女の子は前に座り胡桃の視線に気付いたがすぐにそらしてしまった。


耳にはiPod


手には…



まさかと思った
その女の子の手には一冊のパンフレットがあった


「桃里学園高校」