しばらくして、出来上がった焼きたてのパンや温かいスープの朝食を食べながら、いつものように3人で団欒する。
そこで僕は、ふと気になっていたことをシューに聞く。
「シュー、今日は朝早かったんだね。
あんなに早くどこに行ってきたの?」
するとシューが、えっ!と声を上げてから、きょろきょろと目をさまよわせながら、
「えっと、んーと。
今日はなんだか目が覚めちゃったし、すてきな朝だったから森に行ってきたの。」
と言う。
シューは僕が出会ったころから、嘘や隠し事が下手だ。でもそれに僕は微笑むだけで、何も言わない。シューは悪いことを考えたりしないことを知っているから。
「そうなんだ。
今日の森はどうだった?」
と僕が聞くと、シューはころっと表情を変え、ほんとに嬉しそうな笑顔になって答える。
「それがねっ!すっごくきれいなの!
木も草もお花もすごく喜んでるみたい!」
シューはよく森に行く。
僕がシューに出会ってからずっと関心しているのは、シューの自然に対する敏感さだ。木や草花を見たり、森の空気を吸ったりすることで、その日の森の様子を、悲しい、嬉しい、楽しいなど、感じとれるのだ。
村の人たちは、そんなシューを、ほんとうに純粋な子だ、と微笑ましく思うだけだが、僕は少し違う。
シューにはほんとうに森の気持ちがわかるのだ。この1年で僕は、シューがいるときの森は、どこか穏やかになるということに気づいたからだ。
アルマさんにそのことを話すと
「あの森は昔からある、神聖な古い森なの。
もしかしたらそのおかげで、シューのような子には、そんな森がいつしか持つようになった感情を感じられるのかもしれないわね。」
と言っていた。



