その僕に気づいたように、バルさんはしゃがれた声で笑い、


「ようは、どんな運命であれ、それを受け入れ、その運命すら自分の人生として精一杯生きるか、運命に絶望し、流されるがままの人生を終えるかは、お前次第だということだよ。」


と言うと、僕の頭にぽんっと手を乗せる。

生きてきた長い年月を現すかのように、手に深く刻まれた、しわ。

まだ10年生きていない僕にとって、70年生きたこの老人の深い考えを理解することはできないだろう。



幸せも、不幸せも。

多くに泣き、笑ったこの人は、長い年月を生きたからこそ、たどり着いた世界があり、それは彼にしか見えない世界なのだ。


僕もいつか死ぬ前に、世界はいまとは違った見え方をするのかな。



なんにせよ。

この村に来てから1年。

師のように、僕が慕い、そして慕ってくれたこの人と、もっと話がしたかった。

この人がどんな人生を送ってきたのか、聞いておきたかった。





それから、ほんとうに悲しげな微笑みを浮かべ、バルさんは言った。





「己の人生を、悔いなく生きろ。

わたしの

星の子よ。」